12月に出した「ぞうさん通信」。今回も先生の記事をどうぞ!
<亮せんせい、勤務医時代を思い出す>
TVドラマ「コウノドリ」を数回観ました。産科医が主人公の、周産期医療を描いたドラマです。結構人気があるようですね。原作は今も連載中の漫画で、勤務医時代に同僚の産科医が熱心に読んでいたのは知っていましたが、自分でちゃんと観たのは初めてでした。観てみてまず思ったのは、かなり事実に忠実に作ってあるな、ということです。それは赤ちゃんの姿などのディテールもそうなのですが、それ以上に各回のテーマである妊娠・出産に関わる様々な問題についての描き方において強く感じました。妊娠・出産にあたっては様々な問題・悩みがありますよね。早産をはじめとする異常分娩はもちろんのこと、正常分娩であってもいろいろとデリケートなテーマがあることでしょう。劇中ではそれらの問題について「こうあるべき」というような正義感の押しつけはなく、悩んで当然というスタンスで患者・家族・医療スタッフの現実を生きる姿が描かれています。
私も勤務医時代は新生児科医で、たくさんのお産に立ち会いました。一方で私は男なので、本当のところでは妊娠・出産を理解していない部分もあるのでしょう。様々な悩みと向き合いながら悔しい思いをしたこともあれば、患者・家族とともに自分も成長できたと思える経験もしましたから、このドラマで見た「現実」に共感する部分が多くありました。
今は周産期医療からは少し離れましたが、このような経験は日々の診療にも通じるものかもしれません。同じ病気のこどもでも、それぞれの「現実」がある。病気ではなく、人を診ることを心がけたいと思います。
来年もよろしくお願いいたします。