子育てのための医療 | ならざき小児科 - Part 3

福岡市東区和白 医療法人育慈会 ならざき小児科

子育てのための医療

  • 子育てのための医療の記事一覧(3ページ目)

クマさんの、「歩こう、歩こう」

 澄んだ空に軽やかに浮かぶ雲、心地よい風、すっかり秋です。いい季節ですね。今回は、こういう季節にはぜひウォーキングしてみませんか、という話です。

 僕はこの5月から歩いて通勤しています。運動不足解消のため始めました。普通に歩けば自宅から診療所まで15分くらいですが、和白干潟の方に回って25分くらい、それもかなりの速足で歩いての出勤です。距離にすれば3キロ程度です。車が少ない道を選んでいますので空気もいいし、風景も楽しめるし、野菜の成長ぶりや川の魚や亀を見ることもできます。歩き始めて、車で通っている時には見えなかったもの、感じられなかったものがたくさんあるのに気付きました。それに、毎日歩くようになってから体も頭も心もすごく調子がいいのです。

 有田秀穂さんの「セロトニン欠乏脳」(NHK出版)を読んでそのわけがわかりました。有田さんによれば、人間の心の状態は脳内にある3つの神経系の働きから紡ぎだされるそうです。快や好きや報酬といったポジティヴな面に関連するのがドパミン神経。不快、嫌い、罰といったネガティブな面は、不安やストレスと密接な関係があり、ノルアドレナリン神経によって制御されています。そして最後がセロトニン神経です。これは、先にあげた2つの神経に対して抑制をかけ、不安にもならず舞い上がりもせず、平常心で生活できるように働いています。中庸の心を維持するシステムです。セロトニン神経が弱ると、うつ病、パニック障害、摂食障害(拒食症や過食症)などの症状が出ます。キレるこどもたちではうつ状態やパニック発作に似た症状が見られますので、セロトニン神経が弱っている可能性も原因の一つとして考えられています。

 それでは、どうしたらセロトニン神経を鍛えられるのでしょうか?これは意外と簡単なことでした。毎日、一定時間、意識的にリズム運動をくり返すことです。セロトニン神経は歩行、呼吸、咀嚼などの基本的なリズム運動によって活性化されるという特性があるそうです。さらに太陽の光はセロトニン神経を活性化してくれますが、室内電灯程度の光では効果がないそうです。というわけで、朝陽を浴びながらのウォーキングはセロトニン神経にとって絶好の栄養だったのです。歩いているうちに心が穏やかになっていくのを感じることができたのも当然でした。逆に、家に閉じこもって、昼夜逆転し、何時間も息を詰めてゲーム漬けの生活をするのが、セロトニン神経を弱らせてしまう最悪のパターンになります。

 こどももおとなもストレスが多い現代人、心穏やかに生きていくコツは、いい生活習慣にあったんですね。毎朝、こどもさんと散歩してみてはいかがですか?歩くことには、いろんなごほうびがありそうですよ。  
                                 
(2006年10月1日)

クマさんの、「年長さん、麻疹・風疹混合ワクチンですよ」

 来年小学校に上がる年長組のお子さんたちに麻疹・風疹混合ワクチンの案内パンフレットが配られましたが、その中ではこのワクチンがなぜ必要なのかがまったく説明されていません。そのため、受けるべきか否か迷っておられるお母さんが少なくないようですし、中には自分のこどもは麻疹も風疹もワクチンはちゃんと済ませているから関係がないと誤解されているお母さんまでおられるようです。

 最近、日本では成人の麻疹が少しずつ増えています。ワクチンで獲得した免疫が一生涯はもたない時代になってきたからです。1回の予防接種ではうまく免疫を獲得できなかったお子さんや、いったんは獲得してもそのうちに免疫が弱ってしまったお子さんのために、麻疹と風疹の予防接種を2回することは非常に有効な対策で、先進国ではずっと以前からやっていることです。麻疹・風疹・おたふくかぜの3種混合ワクチンを2回やるのが普通で、中には3回やっている国もあります。

 今年4月から麻疹・風疹混合ワクチンの勧奨接種が始まりました。ワクチン後進国日本も少しだけ先進国に近づいたというわけです。このワクチンは1期(1歳0ヶ月~1歳11ヶ月児)と2期(就学前の1年間)の2回接種するものですが、厚生労働省は今年は1期の接種だけを開始し、2期は今年1期を受けたこどもたちが対象年齢になるまで開始しない予定でした。これに対して感染症や予防接種の専門家、小児科医から批判が轟々と巻き起こったため、厚労省は2期接種開始は2年後くらいからに早めると方針を変更していましたが、ついには今年6月から開始することになったというのが事の次第です。

 せっかく制度が改善されて、公費で麻疹・風疹混合ワクチンを受けられるようになったのですから、対象のお子さんは是非とも全員受けていただきたいと思います。来年3月いっぱいまでに受ければいいわけですが、1~3月は冬場で風邪も多い季節ですし、かけこみで接種するお子さんが殺到することが予想されますので、外来が混んでいない時期に、体調がいい時を見計らって早めにワクチンを受けられるようお勧めします。

                       (2006年7月23日)

クマさんの「待合室にも保育を」

 6月1日から外来保育士として藤原さんが当院のスタッフに加わりました。待ち合い室での保育が担当です。診察を受けない兄弟児の面倒を見たり、こどもたちに絵本の読み聞かせをしたり、待ち合い室での事故が起きないように目を光らせたり、お母さん方の育児相談にのったり、待ち合い室の飾り付けをしたり、いろいろな仕事をします。

 実は、待合室に保育士さんを配置したいというのは何年も前から考えていました。親子のふれ合い方、こどもたちの行動や発達の状況を観察したり指導したりできる、絵本の読み聞かせや親子遊びの指導を日常的にできる、お母さんたちの相談相手になってあげられる、そういうプロフェッショナルが待合室に欲しかったからです。これまでも保育士の資格を持った若い事務スタッフが2人いて、保育士らしい気配りやこどもたちとのふれ合いをしてくれました。でも、保育の仕事だけを担当するスタッフは初めてです。今回は、毎月NCCの育児教室で親子遊びの指導をしていただいている梯さんに、お母さんたちの育児相談にものってあげられるよう子育て経験がある保育士さんを紹介して欲しいとお願いしたのです。

 小児専門病棟に保育士を配置している病院は少しずつ増えていますが、クリニックで外来保育をしているところはまだ少ないと思います。多数のこどもたちが短時間で診療を受けて帰っていくバタバタしたクリニックの中で、保育士としてどういう形で仕事をするか、教科書もなく手探り状態で試行錯誤してもらうことになるでしょう。でも、きっといい形が自然にでき上がってくるのではないかと僕は思っています。

 「待合室にも看護を」と考えて看護師を待合室に配置しましたが、隔離が必要なこどもさんや具合が悪く治療を急ぐこどもさんを早く発見したり、病気のホームケアや予防接種の相談にのってあげたりできるようになったのは、大正解でした。今度は「待合室にも保育を」です。看護師と保育士がいる待合室は、お母さん方にとっても僕にとっても安心できる場所になりそうです。

 保育の経験も子育ての経験も豊富な藤原さんです。きっとお母さん方の良きアドバイザーになってくれるでしょう。よろしくお願いします。

(2006年6月1日)

クマさんの「丹々会の話」

 クマさんのスケジュールの中には「福岡地区小児科医会」という名称がやたらと出てきます。クマさんは、立候補したわけではありませんが、選挙で選ばれて今は理事をしています。今回は、この福岡地区小児科医会、通称「丹々会」のことについて書きます。

 丹々会とは福岡市とその都市圏(粕屋・筑紫・糸島地区)の小児科専門医の会です。現在会員は140名を少し超えています。昭和20年頃に九大小児科出身者が酒を酌み交わしながらなごやかに世間話や雑談をする会を始めたのがその起源だそうです。会に名前を付けるに当たっては、博多の方言でお酒を意味する「タンタン」から「タンタン会」になりましたが、片仮名ではおかしいということで探しあてられた字が丹。丹は赤で、赤心などまごころを意味することから「丹々会」と改められたそうです。

 現在丹々会が行っている事業としては、乳幼児健診・予防接種・急患センターへの出務、乳幼児保健事業、医師会や福岡市への乳幼児保健の政策提言、産婦人科医会や耳鼻科医会など他の専門医会との交流、韓国仁川市小児科医会との国際交流、学術講演会、会報発行、小児科専門書の企画・編集、会員親睦行事(旅行・ゴルフ・ボーリング・囲碁・麻雀)など盛りだくさんです。

 学術講演会は小児科に関する最新の知識を得るために年に10回開かれていますが、すでに350回を超え40年以上の歴史があります。丹々会で書いた小児科専門書としては「乳幼児健診マニュアル」や「外来小児科学」といった本が版を重ねていますが、特に後者は医学書としてはベストセラーになっています。というわけで、丹々会は日本でも際だってアクティブな小児科医会として全国的に有名です。

 小児医療に関しては、来年1月から実施される初診料の全額公費負担、すでに行われている予防接種の広域化(市町村の枠をこえてかかりつけ医で公費の予防接種を受けられる制度)や出産前後子育て支援事業など、丹々会の提言や働きかけで実現に至ったものも多く、福岡地区のこどもたちのために大いに貢献しているのです。  丹々会執行部の仕事で診療以外のことに多くの時間を取られるようになったのは辛いことではありますが、やっている仕事の意義を考えれば手抜きはできません。4年の任期のうち半分が終わったところですが、あと2年間はこの会の仕事のために午後6時には診療を終わらせ6時半に診療所を飛び出して行く日がしばしばあると思います。皆さんにご迷惑をかけるのは心苦しいのですが、以上のような理由でお許しくださいますよう、お願いします。

(2006年4月1日)

クマさんの「早起きしょうよ!」

 日本のこどもたちは、世界一遅寝遅起き、睡眠不足です。最近の調査では、1歳児で夜10時以後に就床するこどもの割合が54%にも達しています。そして、いくら朝寝坊しても就床時刻が遅くなるほど1日のトータルの睡眠時間は短くなってしまうことがわかっています。結局、夜ふかしは睡眠不足につながってしまうのです。

 地球は24時間周期です。人間の睡眠・覚醒、体温、ホルモン分泌などのリズムをきざんでいる体内時計は25時間周期です。だから、暗闇で時計なしで生活すると1日に1時間ずつ地球時間からリズムがずれていくのです。地球上で生きていくためには、毎日この時計のズレを修正しなければいろんな症状が現れてきます(これを脱同調と呼びます)。この体内時計をリセットするのに最も大切なのが「朝の光」です。朝の6時前後に体温は最低となりますが、その直後に浴びる朝の光を手がかりに脳の中にある体内時計が地球時間に同調し始めるわけです。

 夜ふかしによる脱同調は慢性の時差ぼけ状態とも言える体調不良をひき起こします。具体的には、1)眠たい時に眠れず、眠ってはいけない時に眠くなる、2)疲労感、3)食欲・意欲低下、4)作業能率低下、・昼間の活動量の低下などです。睡眠不足は認知機能を低下させるので、学力向上も望めません。

 メラトニンは脳から分泌されるホルモンで、抗酸化作用(酸素の毒性から細胞を守る作用)や性的早熟の抑制作用があります。一生のうち1~5歳の頃に最も多量に分泌され、こどもたちはメラトニン・シャワーを浴びて成長します。メラトニンは夜暗くなると分泌されますが、明るいと分泌が抑制されてしまいます。メラトニン・シャワーを浴び損なったこどもたちに、発ガン率の上昇、性早熟の低年齢化、老化促進などの影響が出てこないか懸念されます。また、睡眠不足は高血圧・肥満・糖尿病などの生活習慣病とも関連します。セロトニンは神経伝達物質のひとつで、情動のコントロールに重要な役割を果たしています。不足すると攻撃性、衝動性が高まり、精神的な不安定にもつながります。睡眠不足はこのセロトニン不足をもたらします。詳しいことは第23回育児教室のパンフレットを読んでいただきたいと思います。

 こどもは夜になったら眠るものというのはとんでもない誤解です。大人と同じで、体内時計の動き方からいえば夜ふかしや朝寝坊の方が楽なのです。だから、毎日ちゃんと地球時間にリセットする必要がありますが、こどもは自分では睡眠時間をコントロールできません。睡眠の環境が不適切でも無防備に受け入れるしかありません。また、幼少時の就床習慣は大きくなってからの就床習慣につながります。思春期以降の生活パターンの乱れを予防するためにも、幼少児期の生活指導が重要と言えるでしょう。つまり、こどもの良い眠りを保証してあげることは大人にとって大切な務めなのです。まずは早起きをして、悪循環(夜ふかし→朝寝坊→慢性の時差ぼけ→眠れない)を断ち切りましょう。

 仕事で帰りが遅いお父さん、こどもさんとのスキンシップは早起きして朝の光を浴びながら、ではいかがですか?

(2006年1月29日)

クマさんの「大切なのはアニマシオン」

 こどもの育ちを考える時、養育、教育、時に療育といったことばが思い浮かびますが、早稲田大学文学部の増山均先生はこれに「遊育」ということばを付け加えられます。遊びを育てる、遊びによって育てられるという意味のことばだそうです。そして、何でも過剰すぎるくらい与えられている日本のこどもたちが最も与えられていないものこそ、この「遊育」だとも言われています。 

 僕がこどもの頃、それはもういろいろな遊びをしました。棲家(すみか)作り、戦争ごっこ、手裏剣作り、火炎放射器作り、そり作り・・・。ずいぶん物騒なものも作りましたが、思い返すと、木、竹、わら、釘といった材料を道具を使って加工し、もの作りをしていたことに気付きます。そしていつもそばには友達が居て、みんなの知恵や技を出し合ってより良いものを作ろうと努力していたことにも気付きます。また、体力も必要だったと思います。ものを運ぶ力、道具を使う力が必要だし、戦争ごっことなると走る、跳ぶ、投げる、すべての力が必要でした。こういうもの作り、遊びの中で、僕たちの心はそれはもうワクワク、ドキドキし、傍からみればきっと僕らはイキイキしているように見えたことでしょう。遊びの根源的な意義は、そのワクワク、ドキドキした感覚であり、イキイキとした感情や意欲です。

 こういう遊びの中では、大脳の前頭前野という場所がフル回転しています。最も創造的、統合的な脳の部分です。「ゲーム脳」と呼ばれるテレビゲーム漬けになっている脳では、この前頭前野の働きが極端に落ちてしまい、脳波を見ると痴呆症の患者さんの脳波にそっくりになるという報告もあります。

 以下は増山先生の「遊び」理論です。人間が育つためには、体と心と頭の全体がイキイキと自由闊達に動くことが必要です。子どもにとって「遊び」がなぜ必要不可欠かと言えば、遊びこそが人間が育つために必要なこの自由闊達さを、最も自然に、最も良い条件で保障してくれるからです。だから、このイキイキ、ワクワクする体験が失われてしまったなら、こどもの育ちは貧しいものになってしまいます。人間の活動をつき動かす根源的な「魂(アニマ)」がイキイキと躍動することをアニマシオン(魂の活性化)と呼びますが、 アニマシオンこそ、子どもの体・心・頭を総合的・統一的に育てていく基本的な営みなのです。

 さらに、人間にとって「遊び」は、1)社会性を発達させる、2)技(自分の体や道具をうまく使う技術)を身につける、3)知識の土台を豊かにする、4)こどもの心を耕す、5)生命機能を守り育てる;(a) 行動体力を鍛える、(b) 防衛活力(自律神経系・ホルモン系・免疫系)を育てる、といった大切な意味も持っています。

 「遊び」を失った育ちでは、どんなに「学び」の時間を増やしても、まともな人間の育ちにはならないことを私たち大人は心しましょう。そして、こどもたちに質の良い遊びを与えられるよう努めましょう。「遊びの復権」が必要な時代ですね。

(2005年9月30日)

クマさんの「もうじき冬ですね」

 7月から9月くらいまでは、感染症やアレルギー疾患が少ないため、小児科診療所はどこも患者さんが少なく、待合室にはゆったりした雰囲気が漂っています。NCCでは、この季節にいろんな勉強をしたり、来るべき冬に備えて準備をするようにしています。そして、10月も中旬になると少しずつ殺気だち始め、12月には多忙の極みに達します。

 当院は予約診療ですので、季節によって1時間あたりの患者さんの数をコントロールしています。これまで夏場は10~12人、冬場は14人で予約を受けていました。しかし、昨年の実績から考えると、ことしの冬は1時間14人では受診を希望される患者さん全員を診ることがとても困難のようです。でも、NCCをかかりつけの診療所と思ってくださる患者さんたちをちゃんと診ることは私たちの使命ですから、できる限り効率的に、それも質を落とさずに診療して、皆さんの期待に応えなければと考えています。ことしの目標は1時間16人の診療です。

 そのために看護士の増員をしました。彼女たちには、これからトレーニングを重ねて、問診(症状の経過の聞き取り)やホームケアの指導などをしてもらうつもりです。また、きめ細かい指導や解説を記載したパンフレットも充実させていくつもりです。そのような対応で、診察室での私との接触時間が短くなることに関する皆さんの不安や不満を最小限にしたいのです。

 同時に、スムースな診療を行うために、みなさんにお願いしたいこともいくつかあります。まず第一は診察室への入退室です。名前を呼ばれてもなかなか診察室に入ってこられず、看護士が探しに行くなんてことも時々あります。次の診察順の方は、ぞうさんシートに着席して、すぐに診察室に入る準備をしておいてください。もしトイレに行くなどの理由でぞうさんシートに座れない場合はスタッフに伝えてください。診察の順番を調整します。また、外出される場合は必ず受付にそう伝えてください。次にお願いしたいことは、診察を受けない兄弟児さんはできるだけ診察室にいれないようにしていただきたいことです。診察室の中で診察を受けない兄弟児さんに動き回られると、診察の介助に当たっている看護士の妨げになり、スムースな診療ができなくなります。診察を受けない兄弟児さんの相手は、待合室のスタッフにご遠慮なくお申し付けください。3番目は、診察がすぐできるよう、服がすぐ脱げる態勢を整えておくことです。冬場は厚着をしているこどもさんも少なくありません        が、聴診したり、皮膚の状態を観察するためには裸にしなければいけません。すぐに肌が露出できる態勢になっていないと困ります。とにかく、1人あたり4分弱の診療ですから5秒、10秒という時間でも無駄にはできないことをご理解下さい。        

 そして最後は予約時間を守っていただくことです。せっかくスムースな診療が進んでいても、遅刻される方が何人か続けばたちまち遅れが出始めます。時間通りに来院された他の患者さんたちに迷惑をかけてしまうことになります。多忙な時期は、他の患者さんたちに対する迷惑度が高いので、15分以上遅れた方には改めて予約を取り直していただくことも考えています。

NCCは、忙しい冬場も、できるだけ多数のこどもさんたちの期待に応え、できるだけ待たせずに、質の高い診療をするために最大限の努力をするつもりです。そのためには、みなさん方のご協力が不可欠です。お互いに努力・協力しながら、理想のこどもクリニックを作っていきましょう。  
(2005年9月30日)

クマさんの「子育て支援ふれあいコンサート」

 8月1日に当院も満5歳の誕生日を迎えました。5年前には未熟な赤ちゃんでしたが、いろんな面で立派に成長し、個性も十分すぎるくらいに育ちました。見学者が訪れるような先進的なITクリニックになりましたし、いろんな健康情報・育児関連情報を提供するパンフレットも随分増えました。漢方薬の処方量も少しずつ増えています。しかし、もっとも伸びたのはこどもたちの間でのこの「ぞうさん病院」の人気かもしれません。

 満5歳になったのを記念して、7月31日にコミセン和白で子育て支援ふれあいコンサートをしました。日頃コンサートには縁遠い、子育て中のお母さん、こどもさんたちを対象にしたコンサートです。出演は福岡が誇る音楽集団、JOY倶楽部アンサンブルです。JOY倶楽部は福岡市博多区にある知的障害者のための社会福祉法人ですが、音楽や美術・工芸を仕事にしているところが全国的にも非常にユニークな団体です。JOY倶楽部アンサンブルの演奏は「ウールの持つ肌ざわり、アナログ感覚の優しさ」と表現されていますが、何よりもステージでの演奏を心から楽しんでいる彼らの輝く表情が、聴衆に音楽の楽しさや感動を与えてくれます。できるだけたくさんの人たちに彼らの生のステージを楽しんでいただきたいと思い、このコンサートを企画しました。そして、演奏中にこどもさんが少々泣いても我慢してもらうよう、曲目もこどもたちが楽しめるものを中心にしていただくようお願いしました。

 当日は、まずクマさんが「おとなからこどもたちへ~何を伝えるべきか~」という話で前座を務めました。この地球、この時間、ここにこうやって生きていること、それは奇跡です。だから、地球を大切にしよう、命を大切にしよう。あなたは世界中、宇宙中でただひとつの存在です、あなたのその奇跡を大切にしよう。だから自分らしく生きよう。というメッセージを語りました。そして、お母さん、お父さん達にはこどもにはもっと遊びを!おとなもこどもの心を失わずに!こどもは親の姿をみながら育つことを忘れずに、というアドバイスをしました。

 そして、いよいよJOY倶楽部の演奏が始まります。いつもながらの、暖かく、優しく、楽しい演奏です。ステージ上の彼らは、誇らしげに、楽しげに演奏しているように見えます。それを見て、僕たち聴衆も心から楽しくなってきます。クマさんの話の時にはうるさかったこどもたちも、彼らの演奏が始まるとおとなしく聞き入っているのが印象的でした。予想通り、JOY倶楽部の音楽は小さいこどもたちの心をもとらえてしまうんですね。1時間がアッという間にたってしまい、アンコール曲の演奏まで終わった時には、僕たち聴衆の心はすっかり満たされたようです。会場を去る親子の表情は、どれもとってもハッピーそうでした。

 何人ものこどもたちから「先生、楽しかったよ」と声をかけてもらえたので、僕もとってもハッピーでした。このコンサートに来てくれた人たちは、音楽の楽しさを存分に味わえたと思います。でも、それだけではなく、障害を乗り越え、楽しみながら一生懸命に頑張るJOY倶楽部のメンバーの姿から、「どうすればより良く生きていけるか」という命題に対するヒントを感じたりしてくれたに違いないと思いました。彼らは、神さまから私たちにつかわされた天使たちなのです。

 総括です。とってもいい子育て支援コンサートができたと思います。何かしら感じるものがあり、得られるものもあったでしょう。そして、皆さんが心から楽しむことができ、ハッピーになれたことが何よりも素晴らしいことです。クマさんは、ぜひまたこういう機会を作りたいと、心から思いました。   

(2005年8月1日)

クマさんの「お母さん、それも愛情」

 すっかり夏めいて来ましたが、今年は変な年です。1月末までインフルエンザが出なかったので、今年は流行はないかもしれないなどと一部では言われていたのに、2月からはB型が先行する形でA型、B型入り乱れての大流行となりました。そして5月中旬になってインフルエンザの流行がやっと終息かと思いきや、今度は一気に夏かぜが出始めました。どの季節も、感染症から身を守るため、食事の前や家に帰ってきた時には手洗い、うがいをする習慣をつけましょう。

 さて、今回は診察室での話です。診察室の中で、こどもさんをしっかりと固定してもらわないと困ることがあります。じっとしていてくれた方が十分な観察ができるのは当然ですが、皮膚の状態を観察したり、聴診器で呼吸や心臓・腸の音を聞くときくらいなら、多少動いていても何とかなります。でも、舌をおさえるへら(舌圧子「ぜつあっし」と言います)を使ってのどを観察する時、耳鏡やファイバースコープで耳の中や鼻の中をのぞく時、ワクチンを注射する時などに、こどもさんが暴れたりすると、下手するとけがをしてしまいます。当院でも、耳鏡で外耳道が切れて出血したことが一度だけありましたし、せっかく皮膚に入った注射針が抜けてしまって刺し直すようなこともたまにあります。このことはお母さんたちにもしっかり知っていてほしいと思います。

 それで、保護者の方と看護師の二人がかりでこどもさんを固定することになるわけですが、時々保護者の方の固定が甘すぎるために、診察中にこどもさんが体の向きを変えてしまったり、床にずり落ちてしまったり、こどもさんの手が舌圧子やファイバースコープや注射器に伸びてきたりすることがあります。僕はヒヤッとして、冷や汗がタラリと落ちます。なかには、1回の診察中に何度もこどもさんを抱き直すお母さんもいます。

 力のある小学生たちは、「じっとしとかな、危なかばい(じっとしておかないと危ないよ)」と言えば、たいていはじっとしてくれます。でも、小さいこどもさんにそんな理解力はありません。腕ずくでしっかり固定してあげるしかありません。こどもさんをまっすぐ僕に向け、お母さんのおなかや胸にこどもさんの体を密着させて、手が上に上がってこない姿勢にして、しっかり抱きしめてあげればいいのです。中途はんぱな固定が役に立たないことは、上に書いた通りです。しっかり固定してもらえば、要領よく診察がすむし、やり直しをする必要もないのです。

 こどもさんの固定がうまくできないお母さん。かわいいわが子が泣くのを見るのは忍びない、泣かせたくない、押さえつけるなどしたくない、と感じていらっしゃるのでしょうか?でも、あなたがしっかり抱きしめてあげないために、診察される時間が不要に長びいて嫌な思いをしたり痛い思いをするのはあなたのお子さんですよ。

 必要な時には、嫌がってもしっかりと抱きしめてわが子を守ってあげるのも愛情です。子育てにも通じる話だとは思いませんか? 

(2005年5月28日)

クマさんの「NCC美術館」

 この正月から藤城清治の絵「風の中の白いピアノ」を展示しています。昨年12月、北九州の藤城清治展に行った時に購入したものです。藤城さんの作品は色彩感覚あふれる影絵で、美しくて楽しくてメルヘンそのものですが、一度本物を見てみたいと以前から思っていました。実物は想像していた以上に素晴らしかったです。それは、会場の暗さや影絵を映し出す光源の加減が絶妙で、藤城さんが意図した通りのイメージが伝わってくるからです。影絵は性質上極端にコントラストが出てしまうものですが、実物を見て適所にぼかしのテクニックが使われているのも初めて知りました。影絵は細かい作業の積み重ねを要しますが、その影絵で巨大な作品を作り上げる藤城さんのパワーにも驚嘆しました。

 感激した僕は藤城さんの影絵をぜひ待合室に置きたいと思いました。でも、影絵の良さを感じてもらうためには絵じゃだめだとも思いました。販売コーナーには絵しか置いてなかったのですが、薄暗い階段の踊り場に光源付きのパネルが5点ほどあるのを見つけました。これだ!と、購入したのが「風の中の白いピアノ」なのです。待合室で見ても、5分くらいなら見飽きません。みなさん、どうかこの藤城ワールドを楽しんでください。

 診察室前の壁には、やなせたかしの「パン工場の秋」(アンパンマンの絵)という大作もあります。これは高知のアンパンマン・ミュージアムに行った時に買ってきたものです。かかりつけのこどもたちに人気があるようですが、これも楽しくて飽きがこない絵です。小品であれば、やなせたかしの版画や、葉祥明、プルーナのレプリカがあります。テディー・ベアの陶板や須永博士のパネルもあります。でも、飾るスペースがあまりないので、時々交換しながら展示しています。

 もっぱらこどもたちの目を楽しませたくて展示しているのですが、お母さんたちのためにはいろんな美術館・美術展の図録がたくさんあります。僕は若い頃から絵を見るのが好きで、美術館には良く行きます。学会で出張した時には、時間を見つけてその土地の美術館に足を運びます。海外に旅行する時も、ワイン、オペラやミュージカルと同様に、美術館に行くのが大の楽しみです。というわけで、ぞうさん文庫にはたくさんの図録があります。診察までのちょっとした時間に絵をながめて過ごすのも悪くないですよ。お気に入りの絵や画家が見つかるかもしれません。

 文学、音楽、絵画といった芸術は、人間だけがもつ知性、創造力の産物です。それに触れることによって、気晴らし、楽しみ、癒し、励まし、学び、より良く生きるための啓示、などいろんなものが得られます。こどもたちには、ぜひとも芸術に触れる機会をたくさん作ってあげてください。

 バーチャルなものではなく、ナマに触れるのはとっても大切なことです。今度の日曜日は、親子して美術館にでも行ってみませんか?

(2005年1月23日)

病児保育室ぞうさんの家
診療・健診・ワクチン接種 インターネット予約

ネット問診票はこちら

●診療時間

時間
9:00〜12:00-
13:30〜15:00---
15:00〜18:00---

月間診療スケジュール

受付時間 8:00〜12:00/13:30〜17:00
13:30から15:00の間はワクチン接種・健康診断のみを行っております。

初めてお越しの方へ

●所在地
〒811-0202 福岡市東区和白5-7-16

当院までのアクセス

スタッフ募集
管理栄養士による栄養相談
診療券は大事な情報