子育てのための医療 | ならざき小児科 - Part 4

福岡市東区和白 医療法人育慈会 ならざき小児科

子育てのための医療

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クマさんの「タミフルの話」

 先週から和白地区でもB型インフルエンザの流行が始まりました。そこで今回は、インフルエンザの治療薬オセルタミビル(商品名タミフル)をめぐるトピックスのいくつかを紹介しましょう。

 昨冬、乳児に対するタミフルの危険性が報道され、あたかも乳児にはタミフルが使えないかのような誤解が世間に広まりました。報道されたのは、動物実験でこどものねずみにタミフルを与えたところ、脳内の薬物濃度がおとなのねずみの1500倍もの高値を示したというデータです。しかし、その実験で与えられたタミフルの量は、体重当たりに換算すると、こどもに対する通常の投与量の500倍にも相当します。したがって、危険性に関して十分な根拠のあるデータとはとても言えません。ただ、メーカーが十分な臨床実験(治験と言います)をしていないため、こどもに対する安全性、有効性がまだ完全に確立されていないことも事実です。治験には膨大なお金、時間、手間がかかるため、社会においてマイナーな存在であるこども、妊婦、授乳婦について十分な治験を行うメーカーは非常に少なく、たいていの薬の説明文書には「小児、妊婦、授乳婦については安全性が確立されていない」という文言がつきものです。薬を開発・販売して利益を得るメーカーにとって、そのような治験は面倒で経営的に損なのかもしれませんが、医療に関わる業種としての社会的責任を放棄していると言っても過言ではありません。前のクリントン米大統領も、メーカーに対して小児に関する治験を早急に拡大するよう声明を出したことがあります。

 先のデータを理由に、乳児にタミフルを使えないというのは間違っています。日本小児科医会は厚生労働省に対して、マスコミで報道された危険性が本当に使用禁止につながるだけの科学的根拠はないと抗議しました。それに対して、厚労省は危険性と利益を十分考慮し、かつ保護者にタミフルに関する説明を十分に行い、同意を得た上で慎重に使用するようコメントを出しました。つまり、使っていけないということではありません。現時点でタミフル以上に有効性、安全性にすぐれた抗インフルエンザ薬はないし、小児のインフルエンザ関連脳症ほど怖い病気もないので、当院ではインフルエンザの診断が確定された乳児に対してはタミフル投与を原則としています。

 新聞でも報道されましたが、昨年7月にタミフルがインフルエンザの予防に効能があることが追加承認されました。詳しい内容が報道されないため、だれでも予防のためにタミフルを使えると誤解されているかもしれませんので、ここにその内容を書きとめておきます。1)インフルエンザ患者との接触後短期間の予防が目的ですから、ワクチン接種の代わりになるものではありません、2)対象になるのは、インフルエンザ患者と同居している65歳以上の高齢者と13歳以上のハイリスク疾患患者(慢性の呼吸器疾患や心臓病、腎臓病、糖尿病など)、3)使用方法はインフルエンザ患者と接触後2日以内に内服開始し、1日1回1カプセルを7~10日間連続内服する。大事なことは、予防のための使用に関しては問診、薬剤費、調剤料などに一切保険がきかないことです。また、こども用のドライシロップは予防のためには使用できないことになっています。

 最後に、日本では来るべき新型インフルエンザの大流行に備えて国家的なタミフル備蓄を始めたことを付け加えておきます。新型インフルエンザに関してはまた別の機会にしましょう。                      (2005年1月30日)

クマさんの「6ヶ月 ただでは済まない BCG 」

 すでにマスコミの報道を通してご存じの方も多いかと思いますが、結核予防法の一部改正がおこなわれ、平成17年の4月1日からBCG接種のルールが変わります。これまで、ツベルクリン反応検査(ツ反)が陰性のお子さんだけやっていたBCG接種ですが、来年4月1日からはツ反はおこなわずすべての赤ちゃんに直接BCG接種をすることになりました。しかも、接種時期が現在の4歳までから、一気に満6ヶ月になるまでということになります。

 そもそも乳児期にBCG接種を行う理由は、乳児が結核にかかると非常に重症化して全身性結核(粟粒結核)や結核性髄膜炎になって死亡したり重い後遺症を残すからです。それを防ぐためには、人生のできるだけ早い時期にBCG接種をすることが望ましく、ドイツなど生まれて間もない新生児期に行う国もあるくらいなのです。また、ツ反陽性のこどもに対する抗結核剤投与は必ずしも必要ではないものも多いため、不必要な治療の弊害を防ぐ目的もあります。

 気をつけていただきたいのは、このルール変更には移行期間がなく、経過措置がないことです。来年の4月1日以後、満6ヶ月を超えた赤ちゃんは公費ではBCG接種ができなくなります。希望する場合には、自費で受けなければいけません。しかも、福岡市の場合、保健所や開業医ではなく結核予防センターなど特定の医療機関まで行かなければ受けられません。

 何らかの理由でまだBCG接種を受けていないお子さんは、早めに保健所に問い合わせて、来年3月末までには済ませておくようにしましょう。また、今年7月以後に生まれたお子さんは必ず4カ月児健診を受診してBCG接種を済ませるようにしましょう。

(2004年12月1日)

クマさんの「ワクチンのルールは変わるもの」

 ワクチンに関する規則や実施方法はずっと同じというわけではありません。むしろ、時代とともに変わっていく部分の方が多いかもしれません。

 たとえば、昨年から学校でのツベルクリン反応とBCG接種が廃止されました。これで、学校でのワクチン接種はすべて行われないことになりました。来年度からは乳児健診でのツベルクリン反応も廃止され、直接BCGが接種されることになります。

 また、昨年の予防接種ガイドラインの改訂で、感染症にかかった際に次の予防接種までにあけるべき期間の見直しもされました。はしか(麻しん)の治癒後4週間程度は変わりませんが、風しん、水ぼうそう(水痘)、おたふくかぜ等は治癒後2週間から4週間程度になり(以前は1ヶ月)、突発性発疹、手足口病、伝染性紅斑等のウイルス性疾患は治癒後1週間から2週間程度になりました(以前は2週間以上)。

 熱性けいれんも、以前なら最終けいれんから1年以上あかなければワクチン接種ができなかったのですが、今では2~3ヶ月もあけばできるようになっています。

 ここで強調しておきたいのは、このようなルールは絶対的なものではなく、こどもさんにとってワクチン接種をした方が明らかに健康上のメリットが大きい場合、保護者の同意と主治医の判断があれば、ルール通りでなくとも接種できることです。

 最後に、近い将来変更されるのは、1)麻しんワクチンが2回接種になること、2)現在は2回飲んでいるポリオの生ワクチンが不活化ワクチンになり、3種混合ワクチンのように4回注射するようになることです。麻しんワクチンが2回接種になるのは、1回接種では麻しんにかからないで済む免疫状態を生涯にわたって維持するのが難しい状況になりつつあるのが理由です。世界的にみれば、麻疹が撲滅されつつあるアメリカなど多くの国では麻疹ワクチンはすでに2回接種が標準となっています。ポリオが不活化ワクチンになるのは、生ワクチンでは稀にワクチン・ウィルスが突然変異で毒性をとりもどし接種を受けた人やその周囲の人にポリオと同じような病気(ワクチン関連麻痺)が発生してしまうことがあるからです。欧米諸国ではほとんどが不活化ワクチンを使用しています。

 このように、感染症の流行状況やワクチンの開発・改良状況に合わせて、今後もルールは変更し続けられるでしょう。こういう情報はすべて新聞などで報道されています。お子さんのためだけではなく、お父さん、お母さんご自身のためにも、感染症やワクチン事情にもっと関心をもって欲しいと思います。 

(2004年10月1日)

クマさんの「コロコロくるま、戻っておいで」

 NCCの待合室にはおもちゃがたくさんあります。おもに木製の安全なものを選んで買っていますが、僕自身が遊んでみて楽しいことも購入する際の必要条件です。

 3台連結した木の車が斜面のレールをコロコロと音を立てながら方向変換をしながら走っていくおもちゃは、単純ですが見ていて何だか飽きることがないので、大好きなおもちゃです。こどもたちにも大人気で、いつも待合室からコロコロ、コロコロと音が絶えることがありません。バラバラのパーツを上手に組み合わせて作る目覚まし時計の木製パズルも、曲がりくねったレールに沿っていろんな形、いろんな色のオブジェを目的地まで運んでいくおもちゃも、こどもたちは楽しそうに遊んでいます。

 しかし、残念なことですが、これらのおもちゃのパーツが少しずつなくなっているのです。遊びたいのに遊べないので、「どうしてコロコロくるまがないの」とスタッフに尋ねるこどももいます。

 なくなる理由ははっきりしています。大好きなおもちゃを手放したくないこどもたちは、診察の時でもおもちゃを握りしめて診察室に入ってきます。きっと、そのまま握りしめて家まで持って帰ってしまうのでしょう。悪気なんてまったくなく、ほかのこどもに取られたくない、大好きなものを放したくないだけなのです。ですから、家でこどもさんがおもちゃの一部を握りしめていたり、ポケットの中に入っているのを発見したことがあるお母さんがたが何人もおられることだと思います。でも、非常に残念なことに、なぜかNCCにそれらのパーツが戻ってくることはほとんどありません。

 先日、コロコロくるまのレールが事務室に置いてあるのに気づいた僕が「どうして」と尋ねると、「走らせるくるまがないから。こどもがどうしてくるまがないのかと聞いてくるから」との返事でした。僕は即座に、くるまがなくてもレールを待合室に置くよう指示しました。だって、これぐらいいい教育、しつけのチャンスはありません。「どうしてくるまがないの」とこどもたちに聞かれたら、「だれかがお家に持って帰っちゃったんだ。みんな遊びたいのに困るよね。早く戻ってくるといいんだけどね。」と答えてあげればいいんです。それだけで、おもちゃがみんなのもので、ひとり占めすることが良くないことが、こどもたちにも理解できるはずです。家でNCCのおもちゃを発見したお母さんも、お子さんに「○○ちゃん、これは病院に返そうね。みんなが遊ぶおもちゃだから、これがないとほかのこどもたちが寂しいでしょ。レールもコロコロくるまがいなくて寂しいでしょ」と話してあげてください。

 「これ、うちのこどもが間違って家に持って帰っていました」とひとこと言って、NCCにおもちゃの一部を返すことは何にも恥ずかしいことではありません。お子さんがおもちゃをちゃんと自分の手で返すことができたら、「○○ちゃん、えらいね。これでみんなが遊べるね。」と精一杯ほめてあげましょう。スタッフもきっと大いに喜んで、心からほめたたえるでしょう。逆に、お子さんが道徳観念を学習しないままでいること、お母さんがうしろめたい気持ちを抱え続けるのは問題です。僕はとても心配です。

 コロコロくるまよ、みんなが待っているから、早く戻っておいで。

 最後に、みんなのおもちゃを大事にすること、乱暴にあつかってこわさないようにしつけることも忘れないでくださいね。

 「みんなのすきなおもちゃ、ひっぱるくるまがしんでしまいました。きょうりゅうは、あしのほねをおられて、にゅういんちゅうです。せっかくみんなのともだちになれたのに、かわいそうだね。みんなも、おもちゃがいなくなるとさびしいだろう?おもちゃをたいせつにしようね。」

 これは、ぼくからこどもたちへのメッセージです。

(2004年2月2日)

クマさんの「僕のズボンが汚いわけ」

 僕のズボンは膝のあたりがいつも汚れています。泥がついていることもあります。クリーニングに出しても、3日ともたず、また汚れてしまいます。診察の時に、こどもたちの靴やサンダルで蹴られるからです。

 こどもたちの喉や耳の中をのぞき込んで見るとき、ワクチンの注射をする時、嫌がるこどもたちは全身を使って必死で抵抗するのですが、足も大いに武器として使います。それで、僕の膝のあたりがいつも標的になるわけです。雨の中をお母さんと長靴で歩いてきたこどもに蹴られた時などは最悪です。

 白衣を着ればいいのでしょうが、開業以来僕は白衣を使わないことにしています。それは、こどもたちに恐怖感を与えないようにしたいこと、お母さんたちに対しては権威を感じさせないようにしたいことが理由です。白衣を着ても着なくてもこどもたちの恐がり方に差はないという研究もあるようですが(こんな素晴らしい研究もあるんですね)、白衣を怖がるこどもがいることは事実です。ですから、NCCに初めて来て上手に診察させてくれたわが子の姿に驚いて、「以前の病院では、先生を見ただけで泣いて診察させなかったんですよ」というお母さんの話を時々伺います。

 お母さん方にとっては、気軽に相談を持ちかけたり、子育てについての雑談もできるような存在でいたいと思っていますので、権威や威厳を感じさせたり、怖がられることがないように気をつけています。白衣を着ないのはそのためでもあります。でも、自分で心配するほど、権威や威厳といったものは僕にはないようですが・・・

 それじゃ、こどもたちに靴を脱いでもらって診察室を土足禁止にすればいいじゃないか、と言われる方もあるかもしれません。でも、それではバリア・フリーになりません。診療所の設計に関しては、建築事務所とずいぶん議論をしました。暖房つきのコルク床など、すごく魅力的な提案もありましたが、結局僕はバリア・フリーにこだわりました。障害をもったこどもたちが車いすのまま玄関から診察室までスムーズに入ってこれるように、段差をなくし、ドアは全部開き戸にし、土足のまま移動できるようにしたかったのです。これは、障害をもったこどもたちだけでなく、バギーを使用中の乳幼児に関しても必要な配慮だと思ったからです。

 というわけで、ズボンが汚れるのは承知の上のことでした。泣き叫んで診察させてくれないこどもたちも、じきに自分から「あ~ん」と口を開けて上手に診察させてくれるようになります。これも、僕の楽しみの一つです。ですから、こどもさんが靴でぼくのズボンを汚しても、お母さんは気の毒がることはありませんよ。

(2004年1月19日)

クマさんの「まじめの勧め」

 最近「まじめ」という言葉は否定的なニュアンスで使われることが多いそうです。カッコ悪いことの1類型であり、馬鹿にする気持ちを込めることさえあるそうです。

 思い返すと、僕は昔からまじめだと言われてきました。でも、中学生時代は羽目を外すことも結構多く、職員室の前の廊下で正座をさせられ、先生から頭をコツンコツン叩かれることもしょっちゅうでした(あれがなければ、もう少しシャープな頭脳だったかもしれないのに・・・)。もう時効だから書きますが、高校時代、三苫から奈多の海岸の波打ち際を無免許バイクで遊んだりもしていました。中学から大学まで、ずっとバレーボールをやっていたので、仲間や先輩と遊んだりするのも体育会系としては普通だったと思います。ですから、本人は「まじめ」と言われてもピンとこないわけです。(ついでですが、事務長のコアラさんは、大学時代インカレの全国大会まで行った卓球の名手なのです。)

 しかし、辞書で調べると「まじめ」という言葉の本来の意味は、「本気であること、真心こめてすること」だそうです。それならナットクです。確かに僕は、やりたいことは本気でしてきたと思います。中途半端はいやな性分ですから、やりたいことには本気で取り組んできました。今は、親友のコアラさんと一緒に、理想の小児科診療所作りに本気で取り組んでいます。そういう姿勢をまじめだと言っていただけるのでしたら、誉め言葉として喜んで頂戴することにします。

 わが家のこどもたちも、好きなことをトコトンやるところは親に似ているようです。妥協せず、頑張れるだけ頑張るなんてのは、はたからみたらカッコ悪いのかもしれませんが、正しい生き方だと僕は思います。人生を終えるとき、その人生を正しく評価できるのは自分だけなのです。いかに他人の評価が高かろうとも、本人が満足出来ないのであればその人生は空しい。逆に、他人から何と言われようとも、何も成果が得られなくとも、本人が自分は精一杯やったから思い残すことは何もないというのが、理想の生き方だと思います。

 そういう意味では、こどもたちには「まじめ」を勧めたいと思います。悔いのない人生は好きなこと・やりたいことに一生懸命取り組むことでしか得られませんから、小さいうちからこれぞと思うことには本気で取り組む練習をして欲しいと思います。そして、ご両親にはそういうこどもさんの姿勢を応援して欲しいと思います。

 では、ものごとに真剣に取り組むこどもに育ってもらうコツは何でしょう?おそらく、その答えは「遊び」だと思います。こどもが、強制されてではなく、自発的に取り組んで熱中できるものは、遊びを置いて他にありません。いろんな遊びに熱中し、工夫し、努力し、その成果を実感したり、失敗したりをくり返しているうちに、ものごとに本気で取り組むことができる強さが育っていくんだと思います。僕自身のことを言えば、メンコ遊び、ビー玉遊び、屋根あげ(何のことだかわからないでしょう?)、隠れ家作り、ソフトボール、バレーボール、テニス、コンピュータといろんな遊びに、それこそ「まじめ」に取り組んできました。そして、今は、口の悪い小児科の先輩からはこの診療所作りまで道楽だと言われる始末です。きっと、嬉々として打ち込んでいる様子は遊びにしか見えないのでしょう。

 遊びといっても、ビデオやテレビゲームはダメです。その辺はまた別の機会に・・・

(2002年6月29日)

クマさんの「音楽大好き」

 NCCの待合室にはいろんな音楽を流していますが、今回はそのやりかたとその背景にある僕の音楽史を紹介します。

 待合室で音楽を流すアイデアは開業を考えた時からありました。皆さんが診察を待つ間にも少しはくつろいだ時間が持てるように、欲を言えば待合室も心が癒される空間になるようにと願ったからです。何しろ音楽療法という治療法があるくらいですから、音楽の効果は馬鹿にできません。

 始めは有線放送も考えましたが、やめました。皆さんに聞いて欲しい楽曲を自分で選んで、多少はメッセージを込めた組み合わせで流したいと思ったからです。それで、5枚連奏のCDオートチェンジャーを置くことにしました。スピーカーも結構いい物を天井に3台埋め込みました。誰もいない夜の待合室は、ライトを消しボリュームをあげて「アベ・マリア」を流すと、妙なる調べが繊細に漂う僕だけのコンサートホールに変わります。

 1週交代のCDメニューは、毎週土曜日に翌週分の5枚を選びます。ヒーリング系、クラシック系、ジャズ系、ポップス系、カントリー系、童謡などから、特定のジャンルに偏らないように考えながら、組み合わせます。僕の好きな弦楽器(特にチェロ)のCDと、優しいボーカルが入ったCDは必ず1枚ずつ入れます。10~20分の作業ですが、僕にとってはとても楽しい時間です。

 以上が舞台裏ですが、これまでにお母さん方にCDのことをお誉めいただいたのは3回だけです。 

 僕の音楽好きは中学1年、ステレオを買ってもらった時に始まります。初めて買ったレコードは、「10番街の殺人」(ベンチャーズ)、「ラブ・ポーションNo.9」(サーチャーズ)、それに加山雄三のアルバム「ハワイの若大将」です。もちろんビートルズも大好きでしたが、高1頃からはクリーム、レッド・ツェッペリンといった前衛的なロックに走り、エリック・クラプトンはクリーム時代からずっとファンです。高校卒業前に早熟の友人からジョン・コルトレーンのレコードを借りて衝撃を受け、大学に入ってからはジャズ喫茶に入りびたりでした。大学時代は、コンサートにもよく足を運びました。レコードでは味わえないライブの素晴らしさを知ってしまったからです。主にジャズですが、クラシックや津軽じょんがら三味線なども聞きに行きました。東京での貧しい研修医時代でさえも、何とかお金を工面して寅さんとジャズのディナー・ショーに行ったりしていました。30代ではクラシックのプロモーターをしているテニス友だちができ、そのつきあいでクラシックのコンサートに行く機会が増えました。もともとクラシックには興味がありましたので、10年ほどクラシックをかなり聞きました。九州交響楽団の定期会員にもなっていました。ヨーロッパに旅行したときも、毎晩コンサートに行くのが楽しみでした。そして40代になってからは、カントリーミュージックまで手を広げました。カントリーはいわばアメリカの演歌ですが、熊本のカントリー歌手チャーリー・永谷さんとの出会いはカントリー熱に拍車をかけました。また、「シルクロード」(喜多郎)はヒーリング・ミュージックへの入り口になりました。日本の音楽では、井上陽水、玉置浩二、桑田圭祐、Jay-Walk、ゴスペラーズがお気に入りです。

 これからもNCCではいろんな音楽を流します。こどもたちには、いろんなタイプの音楽があることに気付いて、興味を持って欲しい。そして、音楽を友だちにして人生を豊かにして欲しいと思います。

(2002年2月16日)

クマさんの「ちょっと痛いけど頑張ろうね」

9月8日~9日、宇部市で年に1回の日本外来小児科学会が開かれました。これは小児科外来診療の質を高めるための研究・実践報告の学会で、意欲的で熱心な小児科開業医を中心に成り立っています。開業1年目のNCCからは、クマさんとコアラさんとウサギ(近藤)さんが参加しました。

 クマさんがこども病院時代に参加していたのは小児神経学会や脳波学会といったタコ壺的専門学会でしたが、外来小児科学会は小児科医、看護婦、薬剤師、事務、保育士といろんな職種(一緒に医療を作り上げていく仲間という意味でコメディカルと呼びます)が参加しているので雰囲気がちがいます。会場前のロビーには女性が多いし、笑顔が多いし、楽しげな会話も多い。発表の中にもユーモアが感じられるものが多いし、発表者にも少しくつろいだ気分が漂っています。そして、発表される演題や招待講演のいずれにも共通するのは、「こどもたちのために」、「こどもをかかえたお母さんたちのために」という視点です。ささやかな工夫でも奇抜なアイデアでも、「こどもたちのために」という視点があればOK!という雰囲気があります。その会場にいるだけで「やるぞ」という気分が高揚してくるし、元気が出てくるようです。そして、学んだものがたくさんあったのは言うまでもありません。

 コアラさんは「クリニックの危機管理」、「チャイルドケア」、「遊びの空間と時間」、「電話予約システム・院内報」を勉強してきました。ウサギさんは「重症患者を見落とさないようにしよう!」、「医療事故を防ぐためのスタッフの心得」を勉強してきました。勉強といっても、ただ聞いてメモをとるという普通の学会のスタイルではなく、参加者全員が意見を述べあって議論した上でまとめていくというワークショップ形式ですから、密度が濃い勉強でした。学会から帰ってきて、さっそくNCCに取り入れたものもありました。そして、クマさんが嬉しかったのは、コアラさんが他のいろんなクリニックのアイデアを聞きながら「それはやってる」、「それもやってる」と大抵のアイデアをNCCではとっくに実践していることが誇らしかったと言ってくれたことでした。

 クマさんは、医学的な話題以外では、「物語に基づく医療(ひとりひとりの患者さんに即した医療)」、「外来でできる育児支援」を勉強してきました。また、童謡詩人金子みすゞと児童文学者村中李衣を知ったことも大きな収穫でした。

 一般演題のなかでは、予防接種でこどもが泣くことについての研究に関するディスカッションが印象に残りました。若い小児科医が「少しでもこどもが泣かない外来にしたい」というと、会場から年輩のドクターが「それはおかしい。これも健康教育の一環と考えて、こわい病気にならないように、痛いけど我慢しようねと言い聞かせるのも小児科医のつとめだ」と発言しました。それに対して、「そういう意見が出るのは覚悟していた。意味は良くわかるが、でも、こどもを泣かせたくないという気持ちが本能的にあるので、自分は今後も泣かせない努力をする」と反論していましたが、会場からは双方の意見に賛同する拍手が起こっていました。クマさんは、こういうことを真剣に議論する学会をいっぺんで好きになりました。おまえはどちらか、ですって。僕は、やっぱり年なんでしょうかね。「病気にならないためだから、ちょっと痛いけど頑張ろうね。泣いてもいいけど、暴れないでね。ちゃんとやれたらカッコいいよ。」と言いますね。

 この学会は、来年は名古屋でありますが、今度はスタッフ全員を引き連れて行きたいと思っています。

(2001年10月4日)

クマさんの「1つになったよ」

 昨年8月1日に産声を上げたNCCですが、早いものでもうじき満1歳になります。まだおぼつかない足取りですが、一人で歩けるようになったのが嬉しくてたまりません。これまでNCCを育てていただいた皆さんに、心より感謝の気持ちを表したいと思います。

 初めは患者さんも少なく、コアラさんと昼から海の中道麦酒館に足を運んだこともありました。開院早々、玄関の天井部分を走っている2階ベランダの排水パイプがつまって、玄関に恐ろしいほどの雨漏りを来したという大事件もありました。意気込んでのぞんだ初めての育児教室は、参加を希望される方がほとんどなく、中止の憂き目に会いました。医療事務初体験のコアラさんは、しばしばコンピュータと一緒にフリーズしていました。

 でも、悪いことばかりではありませんでした。いいえ、良いことの方が100倍も1000倍も余計にありました。

 あの涙の育児教室も、今や、参加されたお母さんのほとんどがまた参加したいと言われる、知るひとぞ知るわがNCCの看板となりました。ぞうさん文庫も月間100冊前後の本が借り出されるようになり、しかも紛失した本がまったくありません。利用されたお母さん方からは、「家事と育児でゆっくり本屋で本を探すヒマもないので、図書コーナーに読みたい本がずらっと並んでいるのを見て感激した」という手紙や、「ある本を二度、三度と借り続け、とうとう本屋に買いに行って、今や我が家の育児のバイブルになってしまった」といった手紙をいただいたりしましたので、やってホントに良かったなあと思っています。

 診療面では、懸案の予約診療を1月から開始し待たせない小児科を目指していますが、評判は悪くないようです。お手製の電子カルテは、各種データベースとドッキングした完全オリジナルの優れもの、しかも日々バージョンアップしています。皆さんがご存じないところで、診療にその威力を発揮しています。説明・指導用のパンフレットもたくさん作りましたが、まだまだこれからです。2年目はパンフレット類を充実させるつもりです。

 設備や運営面でも、お母さん方からいろいろと有用なご指摘やご助言をいただきました。玄関アプローチの改良や、滑りにくいマットの設置、感染症発生動向調査の表示、インターネット・ホームページの改善など、さっそく採用させていただきました。これからも、お気づきになったことがありましたら、どうぞご遠慮なくお伝えください。NCCは、地域と一体化した理想の小児科診療所をめざしています。そのためには、皆さんからのご意見やご要望くらい大切なものはありません。開院時より「皆さんの声を聞かせてください」という紙を用意していますが、まだまだ利用されるお母さんは少ないようです。辛口批評(襟を正して聞きます)、お褒めのことば(あると嬉しいな)、楽しいメッセージ(皆さんにも伝えたいな)、NCC改善案、院内報記事、何でも結構です。どしどしご利用ください。もちろん、電子メールでも結構です。

 外来小児科はまだまだ検査や治療に工夫する余地がたくさん残っています。これまで踏み込んでいなかった領域にもチャレンジし、いろんな勉強をして、日常診療の質を向上していきたいと思っています。今後も、こどもたち・こどもを育てるおとなたちの癒しの場をめざすのがNCCの原点だということを忘れずに、進歩し続けることをお約束します。

 1年たって、通院中のこどもたちの成長ぶりにはNCCのそれよりもはるかに素晴らしいものがあります。どんどん歩き始めた子、ちゃんと挨拶ができるようになった子、診察時にちゃんと一人で口を開けるようになった子、ひとりで落ち着いて絵本が読めるようになった子、弟や妹の面倒をみるようになった子。その成長ぶりを観察でき、その喜びをご両親と共有できるのが、小児科診療所の最高の楽しさだと職員一同実感しています。

(2001年7月24日)

クマさんの「あっ、電車」

 私たちのNCCにはユニークな面がいろいろありますが、診察室の真横を電車が通るというのも非常に珍しい診療所ではないかと思います。

 それも、電車が建物に平行して走るのではなく、ちょっと交差するような角度で建物に向かってきますので、結構迫力のある電車の姿が目の前に見えるのです。

 診療所の場所選びをしている時、現在地の話を聞いてまっさきに思ったのが「診察中に電車がすぐそばに見える!」でした。また、弟が和白小学校に通っている頃、電車が止まるところを見たくて線路にタマネギを並べ、母が学校に呼び出された事件を起こした場所のすぐ近くであったのも、何かの因縁かなとも思いました。(こどもたちはまねをしないでね。弟の名誉のためにつけ加えれば、その弟は反省して悪いことはやめ、今では立派な大学の先生になっています。)

 僕自身乗り物は大好きで、車でも電車でも船でも飛行機でも、動いている乗り物を見ていて飽きることがありません。高校生の頃まで、飛行機を設計する仕事をしたいなあという気持ちもありました。

 うちの長男の1~2歳頃の就眠儀式は乗り物の絵本でした。それも、いつも同じ絵本の同じページです。ひとりでふとんに入り、両手で絵本を顔の前にかかげて、じっと絵を見つめ始めます。そのうちに、そのまま絵本を顔の上にのせてスヤスヤと眠ってしまうのです。親にとってはありがたい絵本でした。

 電車が通っていくのを見るときのこどもたちの反応を観察するのは、NCCでの僕の楽しみのひとつです。目を見開いて「あっ」と声を出す子。手を振ってバイバイをする子。診察されるのを嫌がって泣いていたのに、ピタッと泣きやんでしまう子。指を指して僕に電車が通っているよと教えてくれる子。慣れたこどもは診察室に入ってくるなり「電車は?」と聞きます。電車を見るのを楽しみにしているので、診察が終わっても診察室を出たがらない子もいます。

 電車の呼び方もいろいろです。たいていは「デンシャ」ですが、「あっ、西鉄電車」と言う子もいますし、中には「宮地岳線」という子もいます。

 こどもたちは、ほとんど例外なく乗り物が好きです。最近はどこに行くにも車を使って移動することが多いと思いますが、たまには親子で電車に乗ってお出かけしてみたらどうでしょうか?いつもとは違う乗り心地や車窓からの風景を経験したこどもさんとの会話は、きっとはずむことでしょう。また、お年寄りや障害をもった方たちに席を譲るマナーなどを教えてあげる機会にも巡り会えるかもしれません。

 夜遅くにパソコンに向かってこんな文章を打ち込んでいる時にも、仕事を終えて家庭に帰るお父さんやお母さんを乗せた電車がゴトゴト走って行く音を聞くと、この場所を選んで良かったな、と思います。

(2001年5月15日)

病児保育室ぞうさんの家
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