来年小学校に上がる年長組のお子さんたちに麻疹・風疹混合ワクチンの案内パンフレットが配られましたが、その中ではこのワクチンがなぜ必要なのかがまったく説明されていません。そのため、受けるべきか否か迷っておられるお母さんが少なくないようですし、中には自分のこどもは麻疹も風疹もワクチンはちゃんと済ませているから関係がないと誤解されているお母さんまでおられるようです。
最近、日本では成人の麻疹が少しずつ増えています。ワクチンで獲得した免疫が一生涯はもたない時代になってきたからです。1回の予防接種ではうまく免疫を獲得できなかったお子さんや、いったんは獲得してもそのうちに免疫が弱ってしまったお子さんのために、麻疹と風疹の予防接種を2回することは非常に有効な対策で、先進国ではずっと以前からやっていることです。麻疹・風疹・おたふくかぜの3種混合ワクチンを2回やるのが普通で、中には3回やっている国もあります。
今年4月から麻疹・風疹混合ワクチンの勧奨接種が始まりました。ワクチン後進国日本も少しだけ先進国に近づいたというわけです。このワクチンは1期(1歳0ヶ月~1歳11ヶ月児)と2期(就学前の1年間)の2回接種するものですが、厚生労働省は今年は1期の接種だけを開始し、2期は今年1期を受けたこどもたちが対象年齢になるまで開始しない予定でした。これに対して感染症や予防接種の専門家、小児科医から批判が轟々と巻き起こったため、厚労省は2期接種開始は2年後くらいからに早めると方針を変更していましたが、ついには今年6月から開始することになったというのが事の次第です。
せっかく制度が改善されて、公費で麻疹・風疹混合ワクチンを受けられるようになったのですから、対象のお子さんは是非とも全員受けていただきたいと思います。来年3月いっぱいまでに受ければいいわけですが、1~3月は冬場で風邪も多い季節ですし、かけこみで接種するお子さんが殺到することが予想されますので、外来が混んでいない時期に、体調がいい時を見計らって早めにワクチンを受けられるようお勧めします。
(2006年7月23日)