この正月から藤城清治の絵「風の中の白いピアノ」を展示しています。昨年12月、北九州の藤城清治展に行った時に購入したものです。藤城さんの作品は色彩感覚あふれる影絵で、美しくて楽しくてメルヘンそのものですが、一度本物を見てみたいと以前から思っていました。実物は想像していた以上に素晴らしかったです。それは、会場の暗さや影絵を映し出す光源の加減が絶妙で、藤城さんが意図した通りのイメージが伝わってくるからです。影絵は性質上極端にコントラストが出てしまうものですが、実物を見て適所にぼかしのテクニックが使われているのも初めて知りました。影絵は細かい作業の積み重ねを要しますが、その影絵で巨大な作品を作り上げる藤城さんのパワーにも驚嘆しました。
感激した僕は藤城さんの影絵をぜひ待合室に置きたいと思いました。でも、影絵の良さを感じてもらうためには絵じゃだめだとも思いました。販売コーナーには絵しか置いてなかったのですが、薄暗い階段の踊り場に光源付きのパネルが5点ほどあるのを見つけました。これだ!と、購入したのが「風の中の白いピアノ」なのです。待合室で見ても、5分くらいなら見飽きません。みなさん、どうかこの藤城ワールドを楽しんでください。
診察室前の壁には、やなせたかしの「パン工場の秋」(アンパンマンの絵)という大作もあります。これは高知のアンパンマン・ミュージアムに行った時に買ってきたものです。かかりつけのこどもたちに人気があるようですが、これも楽しくて飽きがこない絵です。小品であれば、やなせたかしの版画や、葉祥明、プルーナのレプリカがあります。テディー・ベアの陶板や須永博士のパネルもあります。でも、飾るスペースがあまりないので、時々交換しながら展示しています。
もっぱらこどもたちの目を楽しませたくて展示しているのですが、お母さんたちのためにはいろんな美術館・美術展の図録がたくさんあります。僕は若い頃から絵を見るのが好きで、美術館には良く行きます。学会で出張した時には、時間を見つけてその土地の美術館に足を運びます。海外に旅行する時も、ワイン、オペラやミュージカルと同様に、美術館に行くのが大の楽しみです。というわけで、ぞうさん文庫にはたくさんの図録があります。診察までのちょっとした時間に絵をながめて過ごすのも悪くないですよ。お気に入りの絵や画家が見つかるかもしれません。
文学、音楽、絵画といった芸術は、人間だけがもつ知性、創造力の産物です。それに触れることによって、気晴らし、楽しみ、癒し、励まし、学び、より良く生きるための啓示、などいろんなものが得られます。こどもたちには、ぜひとも芸術に触れる機会をたくさん作ってあげてください。
バーチャルなものではなく、ナマに触れるのはとっても大切なことです。今度の日曜日は、親子して美術館にでも行ってみませんか?
(2005年1月23日)