前回は、日本が世界有数のワクチン後進国であり、世界標準にはほど遠いワクチンギャップがあることを書きました。また、そうなった原因の一番は国のワクチン行政にあるという話にも触れました。
今回は、ワクチン・ギャップが生じた原因はお母さん方や僕たち小児科医にもあること、日本にはVPDの考え方を広げる必要性があることを、書きたいと思います。
日本人は世界的に類を見ない「ワクチン嫌い」の国民という見方もあります。おたふくかぜや水痘は自然にかかった方が良いという考えをもっている人は少なくなく、わが子を患者に接触させて病気をもらいにいくというのは今でも結構よく聞く話です。こんな国は少なくとも先進国では他にはないでしょう。NCCにかかっている韓国人のお母さんが、「他にはもうワクチンで予防できる病気はないんですか?」としばしば質問されるのとは大違いです。
おたふくかぜも水痘も命取りになることだってあるし、合併症も多い病気です。おたふくかぜでは1000人に1人くらいは難聴が残ってしまいます。世界の常識は、ワクチンで予防できる病気(VPD:vaccine preventable disease)は可能な限りワクチンを接種してかからないようにしてあげる、大切なこども達の命や健康を守る、という考え方です。
要するに、日本人は感染症やワクチンに対して不勉強なのです。それだけでなく、間違ったワクチン不要論や悪者説まで世間に広く広まっています。マスコミは、ワクチンの有効性について報道することは稀ですが、予防接種裁判のたびにワクチンの副反応を書き立てます。また、ワクチン反対論者の意見をしばしば引用します。僕たち小児科医は、患者さんたちにワクチンの大切さや正しい知識を根気よく説明し続ける努力が足りなかったようです。
以上のような背景をもつ「日本人のワクチン嫌いあるいは無関心」があるために、世界と比べて20年も遅れているワクチン行政に対して改善を求める世論が巻き起こらないのです。国はそれをいいことに、国民の健康を守るという本来の仕事をさぼっているとも言えます。今回のヒブワクチン不足を契機に、日本のお母さん方が目を覚ましてくれればいいんだがな、とクマさんは思っています。
ワクチンで予防できる病気は完膚なきまで叩きつぶそうとするのが先進国のスタンスです。開発途上国でさえ、将来の国を担うこどもたちのために、乏しい国家予算から捻出して積極的にワクチン接種を勧めているのです。このワクチン・ギャップを早く解消するためには、日本のお母さん方にVPDの考え方が広まることが絶対に必要です。おかあさん、まず”Know VPD!”の ホームページを見て、意識改革を始めましょう(VPDで検索すれば一番最初に出てきます)。
(2009年8月14日)