澄んだ空に軽やかに浮かぶ雲、心地よい風、すっかり秋です。いい季節ですね。今回は、こういう季節にはぜひウォーキングしてみませんか、という話です。
僕はこの5月から歩いて通勤しています。運動不足解消のため始めました。普通に歩けば自宅から診療所まで15分くらいですが、和白干潟の方に回って25分くらい、それもかなりの速足で歩いての出勤です。距離にすれば3キロ程度です。車が少ない道を選んでいますので空気もいいし、風景も楽しめるし、野菜の成長ぶりや川の魚や亀を見ることもできます。歩き始めて、車で通っている時には見えなかったもの、感じられなかったものがたくさんあるのに気付きました。それに、毎日歩くようになってから体も頭も心もすごく調子がいいのです。
有田秀穂さんの「セロトニン欠乏脳」(NHK出版)を読んでそのわけがわかりました。有田さんによれば、人間の心の状態は脳内にある3つの神経系の働きから紡ぎだされるそうです。快や好きや報酬といったポジティヴな面に関連するのがドパミン神経。不快、嫌い、罰といったネガティブな面は、不安やストレスと密接な関係があり、ノルアドレナリン神経によって制御されています。そして最後がセロトニン神経です。これは、先にあげた2つの神経に対して抑制をかけ、不安にもならず舞い上がりもせず、平常心で生活できるように働いています。中庸の心を維持するシステムです。セロトニン神経が弱ると、うつ病、パニック障害、摂食障害(拒食症や過食症)などの症状が出ます。キレるこどもたちではうつ状態やパニック発作に似た症状が見られますので、セロトニン神経が弱っている可能性も原因の一つとして考えられています。
それでは、どうしたらセロトニン神経を鍛えられるのでしょうか?これは意外と簡単なことでした。毎日、一定時間、意識的にリズム運動をくり返すことです。セロトニン神経は歩行、呼吸、咀嚼などの基本的なリズム運動によって活性化されるという特性があるそうです。さらに太陽の光はセロトニン神経を活性化してくれますが、室内電灯程度の光では効果がないそうです。というわけで、朝陽を浴びながらのウォーキングはセロトニン神経にとって絶好の栄養だったのです。歩いているうちに心が穏やかになっていくのを感じることができたのも当然でした。逆に、家に閉じこもって、昼夜逆転し、何時間も息を詰めてゲーム漬けの生活をするのが、セロトニン神経を弱らせてしまう最悪のパターンになります。
こどももおとなもストレスが多い現代人、心穏やかに生きていくコツは、いい生活習慣にあったんですね。毎朝、こどもさんと散歩してみてはいかがですか?歩くことには、いろんなごほうびがありそうですよ。
(2006年10月1日)