西洋では握手、頬ずりの習慣があります、日本では距離をおいてお辞儀をするのが今までの挨拶の習わしでしたが、最近の子どもたちは皆「タッチ」をします。いい悪いは別にして、少し距離感が縮まっている感じがします。
小さい頃すりむいた膝に、母が指でちちんぷい!ちちんぷい!痛いの痛いの飛んでけ~とおまじないをしてくれたのを、また、夢にうなされた時背中を擦ってくれた母の手がとても強く感じたという記憶は還暦を過ぎた今でもなお心の奥に残っています。料理をする母の手、服を縫ってくれた母の手、何でもできる魔法の手のように思ったものでした。もちろん叩かれたこともある怖いしつけの手でもありました。
以前、テレビから流れてくる老夫婦が手をつないでルンルンと坂道を下っていく微笑ましい光景にとても憧れました。後に函館を訪れた際、撮影の坂で無理やりクマさんの手を握って歩きました!ロケーションの眺めも風も気持ちがよく幸せな気分でしたよ。
ところで、私はいまでも母と手をつないで歩きますが、我が子がある程度大きくなったときに手をつなごうとすると嫌がられました。普通と言えば普通だけれど、ちょっとさびしいなと思いました。でも、この度病気になって手術をうけたとき、こどもたちは黙って私の手をしっかり握って励ましてくれました。大きくて暖かい手が心強く感じました。あらためて生れてくれてありがとう、しっかり成長してくれてありがとうと感謝しました。
九大病院を度々訪れることで、老夫婦の姿がよく目に映ります。助け合いながら手を取り肩を寄せている姿は人生の歩みであり、顔の深い皺までがとても美しく輝いて見えます。
「手と手のしわを合わせて、幸せ」というコマーシャルがありますね。以前は自分の両手を合わせてでしたが、今は自分以外の誰かさんの手のしわと合わせてという設定になっています。相手がいてはじめて幸せ、本当にそう思いますね。親子であったり、兄弟姉妹であったり、夫婦、友達・・・。なかでも子どもにとって、やはり母の手が一番の幸せではないでしょうか。
手をつないで歩く姿は幸せの風景そのものでございますね。
NCCぞうさん通信第61号(2012年6月)