子育ておしゃべりコーナー | ならざき小児科 - Part 2

福岡市東区和白 医療法人育慈会 ならざき小児科

子育ておしゃべりコーナー

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第34回:小さな冒険、大きな一歩

 ある土曜日の夕方、福工大前駅のホーム行きの下りのエスカレーターで出会った光景でした。

 私の前に、小さな男の子と母親と祖父母の4人が乗っていました。男の子は「じいじ、僕ピョンと飛べるから見ててね!」と大きな声で言いました。「危ないからだめだよ!」とじいじが言いました。飛べるから見ててね・・・と、いよいよホームに近づき男の子が飛ぼうとした瞬間に、じいじに抱きあげられ無事ホームに降りたったのでした。火がついたかのように男の子は泣きわめきました。「じいじのバカ!僕できるのに!」と、それはそれは大変でした。博多駅に着くころには泣き疲れて寝てしまいました。どんな夢を見ているのかな?

 お年寄りの知恵袋は最初からあるのではなく長い年月の経験からの積み重ねの賜物であり、失敗から学ぶ知恵の方が多いのではないでしょうか。私たち大人は誰しも昔はこどもでした。しかし、どのようにして大きくなったのかは覚えていません。こどものやることを見ていると、本当にはらはらすることが多いですね。自分もこういう風に親をはらはらさせて大きくなったんだなと思うと改めて親のありがたみを感じます。

 自分の子育てのころには、「あのころのわが身とかさね子叱れず」と思ったものでした。小さい頃にはずいぶん叱ったりもしましたが、効果がないし、自分もそうだったんだろうなと悟り、叱りたい気持ちをぐっとこらえて、成長を見守るのが親としての修行と思うようにしました。まさに「育児は育自」ということばのとおりです。こどもと共に親も成長しなくちゃ!

 あの男の子を痛い目に会わせたくないじいじの愛情は微笑ましいものであり、   事故がなく良かったと大人はみな思っていたでしょう。しかし大けがするような状況ではなく、もし男の子が成功していたら大きな自信につながっていたでしょう。もし失敗して痛い目にあっても、男の子はきっと次はもっとうまく飛べるように考えたりするでしょう。これが「成長」というものですね。男の子が怒ったとおり「じいじのバカ!」と私も思ったものでした。
NCCぞうさん通信第56号(2011年8月)

第33回:疲れても頑張れ、ですか?

「疲れてもがんばれ!」こういうキャッチフレーズの商品を見かけました。なんと8~14歳向けのドリンク剤に書かれていた宣伝文句なのです!

 こどもたちがこのドリンク剤を手にする状況を想像するだけで悲しくなります。疲労困憊しているこどもが自分で買って飲むのでしょうか?もっと頑張れと言って親が買い与えるのでしょうか?塾で居眠りするなと飲ませるのでしょうか?
 寝る時間を惜しんで「がんばれ!」、会社の方針がおかしいのか、いいえ、「がんばれ!」が大好きな日本の社会全体がおかしいのではないでしょうか。

 「疲れたら寝る」というのはとても大切なことです。眠りはただ疲れをとるための休養だけではありません。睡眠中に体は我々が生きていく上に欠くことのできないたくさんの大切な働きが行われています。体温、血圧、成長ホルモン、ステロイドホルモン、生体時計、メラトニンなどの生理的な活動が睡眠と深くかかわっているのです。当然知的活動や情緒面においても大いに影響があります。

 年齢に応じて必要な睡眠時間というのがあります。個人差は確かにありますが、睡眠不足の翌日には体がだるく何もしたくないという経験はだれしも感じたことはあるのではないでしょうか?もう一つ大事なポイントは睡眠の質です。これは就寝時刻と関係があります。深夜0時前には寝付くようにした方がいいという専門家のアドバイスがあります。

 睡眠時間を無理にけずることは人生の質を下げることだと私は思っています。睡眠時間が少なく就寝時刻が遅いほど学業成績が悪いという研究データーもあるのですよ。

 世界中で睡眠時間がもっとも短いのは日本のこどもです。塾通いで遅く帰宅し、夜通し遊べるネットもあり、なかなか寝る暇がない環境にあります。寝ない子どもたちが問題なのか?それともこういう眠らせない環境を作り上げた大人が問題なのでしょうか?

 疲れても頑張れって結構むごいと思いませんか?
疲れたらよく眠れ!と声を大きくして言いたい! 
NCCぞうさん通信第55号(2011年6月)

第32回:マスク

 昨年は新型インフルエンザの影響でマスクが品薄の状態が暫く続きました。みんながマスクを着用しているので、目だけでは誰なのかが分からないことが多く、物騒だなと思う時もありました。あるいは病気のこどもの顔色を観察するのにもいちいちマスクを外してくださいと言わなければならない状況でした。感染予防に効果があったのか否かについては、感染症の専門家から様々な意見が出されています。

 感染症にはそれぞれの感染様式があります。例えば日本脳炎は日本脳炎ウイルスを持っているコガタアカイエカに刺されることによって感染を受けるので、予防対策としては蚊が発生しない環境整備と日本脳炎ワクチンを受けることにあります。接触感染である嘔吐下痢症では保育者の手洗いの徹底が最も重要な感染予防対策であります。このようにマスクでは対応できない感染様式の病気もたくさんあります。

 最も厄介なのは飛沫核感染(空気感染)で、病気としては「はしか、水ぼうそう、結核」の3種類だけです。他の病気のウイルスは飛沫核だけの状態で空気中を漂うことができません。インフルエンザは原則的に飛沫感染です。飛沫は咳をした時などに口から飛び出す小さなしぶきで、2メートルくらいしか飛ばないのです。ただし、インフルエンザは例外的に空気感染も否定できないことがあります。

 では、マスクはどれだけ予防効果があるのでしょうか?これにはマスクの性能にもよりますが、もっとも性能の高いN95マスクを正しく着用すれば飛沫核も飛沫もブロックします。しかし、正しく着用すればまずは5分も持ちません。息苦しく、自分の息で内側はびしょびしょに濡れてますます息苦しくなってしまいます。この状態になっていない人は正しく着用していないということになります。正しくないと当然予防効果も低下します。日常生活には向かないマスクですね。では普通によく使われているサージカルマスクではどうでしょうか?飛沫核はブロックできませんが、飛沫はブロックしてくれるので、インフルエンザやいわゆる風邪などに対しては一定の効果があるというのが大方の意見です。特に患者が着用した場合、周りへの感染拡大予防にかなりの効果があります。100%ブロックはできませんが、感染の可能性を低くすることはできます。他人への配慮としてのマスクの着用は大切ですね。

 また、マスクは上気道内の湿度を高め、侵入してきたウイルスの増殖を抑えるというもう一つの効用もあります。自分を守るためにも積極的に着用しましょう。 

 外出時のマスク着用だけではなく、十分な休養とバランスのとれた食事、流行前のワクチン接種、帰宅時の手洗い・うがいも大切な予防対策であります。                
NCCぞうさん通信第52号(2010年12月)

第31回 :基礎化粧

 お肌が荒れているとお化粧ののりがよくないというのは、お母様方は経験的によくご存じのことですよね。だから、毎日朝晩かかさず洗顔をし、化粧水で潤いを与え、乳液で潤いを閉じ込める作業を丹念に行います。こういう日頃の継続的な努力によって、きめ細かいお肌を手に入れ、きれいにお化粧が完成されるわけでございますね。診察室でお母さん達とこの基礎化粧の話をいたします。狙いは基礎化粧の理論に基づく子供たちのホームケアです。

 アトピー性皮膚炎、気管支喘息などの慢性疾患ですが、症状が悪い時には当然のようにお母さん達はしっかりとお薬を塗ったり、飲ませたりをします。しかし、症状が改善してくるともう治ったと考えてさっさと薬をやめてしまいます。急性疾患なら治癒=薬の中止でいいのですが、慢性疾患はそうではないのを理解してほしいと思います。治る・治らないというレベルで評価するものではなく、どのようにいい状態にコントロールするかの病気です。

 アトピー性皮膚炎の場合、先ずは十分量のステロイド外用剤で皮膚炎をいい状態にしてから基礎化粧の段階に入ります。石鹸を使わなくでもいいですし、使う場合にはよく泡を立ててから手でなで洗いをしてください。けっしてゴシゴシしないように!そして、皮膚の潤いが失わない5分以内に保湿剤をぬって、潤いを閉じ込めてください。日々のスキンケア(保湿)によってきめ細かいお肌を保持し、皮膚炎の悪化を防ぐことができます。

 気管支喘息の予防もこれと同じ理論です。普段から喘息の予防薬を継続することによって、刺激に反応しにくい丈夫な気管支をゲットし、喘息の悪化を予防することができます。

 お母様方がご自分の基礎化粧を行う回数分我が子にもホームケアをしていただくととてもいいと思います。

 娘から赤いシャツをプレゼントされた「ジャスト還」の寅ですが、思い返せば小さい時には掻き壊した足を隠すために常に包帯が巻かれていました。朝布団から出たとたんに3軒先まで聞こえるほどの激しいくしゃみの連発、教室ではいつも鼻汁・鼻閉に悩まされていました。大人になってからは喘息、このようにしっかりとアレルギーマーチを辿ってきたのでした。半世紀前には今のようなスキンケアの発想がなかったのが私にとっては不運でしたが、症状的には上り坂あり下り坂あり、なんだかんだと還暦までたどり着きました。すでに老人性皮膚掻痒症に悩まされているので、せっせと全身のスキンケアをしなくっちゃ!何を使っているって?それは内緒で教えましょう。
NCCぞうさん通信第51号(2010年10月)

第30回:涙の味

 診察室で大きな声で泣き叫んで抵抗しているのに涙の出ていないこども、或いは静かに目にいっぱい涙を溜めてついにはぽろぽろっとなっているこども。診察を受ける様子が様々なら涙の様子も様々です。男だから泣くなというお母さん、一緒に泣きそうになるお母さん、これも様々です。私は5人兄弟の長女ですので、小さい時から「お姉ちゃんだから」と言われて育った、意地っ張りで可愛げのない性格、人前では涙を見せないたちでした。クマさんからはよく「鬼の目」と揶揄されました。クマさんは反対にすぐに涙ぽろぽろ、私はいつも「鬼のかく乱じゃ」と言ってタオルを渡してあげるのでした。

さあ、あなたはどのタイプですか?

 涙は目を保護するための大事な役割を持つ体液です。玉ねぎを切るときに出る涙は刺激による反応性の涙。また喜怒哀楽に伴う感情の涙というのもあります。それぞれに味が違うらしい。神経が高ぶって怒りや悔しさに満ちた時の涙はナトリウムが多く塩からい、リラックスした時に出る涙は薄味で脂肪分も少なくカリウムを多く含んでいると文献に書かれています。しかし、どんな味かな?と冷静に味わう余裕がないのが喜怒哀楽ですよね。

 また、涙は感情的な興奮によって体の中で産生されたストレス物質を体の外に連れ出してくれるらしく、したがって涙を流した後に気持ちが落ち着くのだそうですよ。泣きたいときに涙をこらえているより、ワッと泣いてしまった方がいい。そうすると、私はとても損な性格かな?今まで涙を見せないのはストレスに強いと思っていたが実は知らずにストレスを貯めこんでいたのだ。検査しても異常なしと言われた不整脈はストレスだったのか!しかし最近は確かに若い時に比べて涙腺がゆるくなっています、これは歳のせいでしょうね。

 自分の経験を踏まえて、こども達には「男だから・・・」、「お兄ちゃんだから・・・」、「お姉ちゃんだから・・・」という言葉を言わないように気を付けています。予防接種の時には「いやなら泣いていいよ、痛かったら大きな声で泣いていいよ、お約束は一つだけ、動かないでね!」と声をかけるようにしています。上手にストレスを発散してほしいから。

 まぁ、何と言っても塩からい涙でない人生の方が一番です。すべてのこども達に幸多かれと祈るばぁばが一人ここにいるのです!

NCCぞうさん通信第50号(2010年8月)

第29回:しばらくお休みいたします

 このコーナーにはもうずいぶん長くご無沙汰しております。とても気になりながらも、なかなか書けないでいるのです。時間はあるのにゆっくり物事を考えたりまとめたりする気持ちというか気力というか、それが出ないのです。我ながらどうしたんだろうと思うのですが、自分の内面を探るのも面倒な気がします。

 子どもたちがそれぞれ自分の人生を歩み始め、ようやく主人と二度目の二人だけの気楽な生活が始まりました。お互いの仕事に追われながらも、孫が遊びに来てくれるのが嬉しいし、日々楽しく充実しているのになぜ書けないのだろう・・・?今はこれが最大の悩みです。ただし、隔月で発刊しているNCCぞうさん通信を細々と編集できているのがせめての救いのような気が致します。そういう事で、このコーナーをしばらく休止させていただきます。今までのご来訪に感謝いたします。
(2006年2月1日)

第28回:新たな旅立ち

 我が家の末っ子が中学校を卒業した3年前、私もPTA卒業だよという「寅さんのPTA履歴書」をこの欄に書いたのがつい先日のような気がしますが、瞬く間に時がたち、この春彼は晴れて大学生になります。この3年間、部活や体育祭に打ち込み学業が思わしくない時期も長かったので、母としてやはりハラハラドキドキ、忍耐と祈りの毎日でした。我慢しきれずに、時々「勉強もしてる?」とこそっと訊ねてみたりもしました。唯一の光は彼の規則正しい早寝早起きの習慣です。朝4時半に一人で起床し1日が始まる、というパターンが3年間続きました。学生時代遅刻の常習犯であったこの母にしてみれば、尊敬に値する存在で、当然惜しげもなく「あんたはえらい!」と誉めまくりました!

 自宅から通える大学なのに彼は一人暮らしを希望し、この家から巣立ちます。4人のこどもの27年間の子育ても、いよいよ本当に卒業です。そして私たち夫婦にとっては、再び2人だけの生活という新たな旅立ちでございます。

 先日ある講演会に行きました。Loving HUG(Hug は百薬の長)と言うテーマで基調講演をされた新生児医療がご専門の先生が、珍しくご自身の子育てについて語られました。すでに60歳代の先生ですので若い時分は家事育児を分担なさることは当然ありません、その上病院での仕事が忙しく3日に一度しか家に帰られない、家族はいつも「母子家庭」状態だったそうです。そういう状況の中でご夫婦で実践された子育て5原則というのは、1)乳児期にはしっかり抱く(ハグ Hug)こと、2)家でできる教育~あいさつ~だけはしっかり教え込む、3)家父長制を子どもに認識させる、4)役割を与える、5)夫婦円満が最大のしつけ。そして「妻がよくやってくれたことに感謝している」と言われ、最後に奥様と交わされた川柳を紹介されました。

先生:罪滅ぼし ひとよ一夜の 腕枕

奥様:何いうよ 禿がハグして はぐらかし

初老夫婦の本音がちらりと見えて、ほほえましく感じました(註:ハグ Hugとは抱きしめること、ちなみにこの先生は立派なピカピカ頭の持ち主です)。

 主人も若い時分は病院での泊まり込みが多く、似たような状況でしたので、このくだりを感慨深く拝聴しました。こどもが病気の時には度々近所の小児科のお世話になり、「お父さんが小児科でしょう」と先生に冷やかされたりしますと、ハァ母子家庭ですので・・・と私。主人は「男子厨房に入らず」の方ですので当然家事分担は望めません。おまけに、私におヒスレディなる称号まで授けてくれましたが、しかし、育児方針について話し合ったり節目節目で父親として子どもに伝えるメッセージを発信したりしたので、私にとっては一人で背負い込むだけではなかったので精神的には割と楽でした。

 もちろん夫婦の20数年間というものは世間並みに山あり谷あり、泣き笑いにあふれています。岐路にさらされることもありました。粗雑になっていた自分の心を見つめ直したり、互いの価値観を再認識したり、修復をしつつ夫婦の年輪を重ねてきました。新婚の形を灼熱の太陽とすれば、これからはすべてを包み込む深海でありたいと願っています。一つだけ未だに合意に至らなかったのは来世での役割です。私は夫婦の役割を交替してみたいのですが、主人は現世のまま「僕が夫で君が妻」と決め込んでいるのです。三途の川までいま暫くの余裕がありそうですので、次なる旅立ちの前にディベイトをくり返さなきゃ・・・

(2005年4月2日)

第27回:お母さんは勉強がお好き?

 こどもたちが小学生の頃、「早く宿題をしなさい」「早く勉強しなさい・・・」と、いつもの調子でギャァギャァ言っていたら、こどもたちから「お母さんは勉強が好きなの?」という逆襲の質問を受けたことがあります。

 今どきのこどもたちに比べれば私のこども時代(40数年前です!)の方がずいぶんと遊び回る時間もあったはずですが、私はこどもの数が多い団塊の世代の最後尾にいましたので、入試に勝ち抜くためにはやはりかなり勉強させられました。現在のような学習塾はほとんどありませんでしたが、保護者と学校の先生たちが協力し合って放課後や夜間に「補習」といった勉強会を開いていたので、せっせと通わせられたのです。試験のための勉強、勝ち抜くための勉強はとてもいやでした。今では、未知を知る喜びという意味での勉強は好きですが、残念ながら在学中の「勉強」にはそういう喜びの境地までには至らず、勉強がいやな気持ちは医師国家試験まで続きました。

 私が本当の意味の「知る喜び」を味わうようになったのは社会人になってからでした。主人は私とは違って早くから知る喜びに目覚めていたようで、結婚した後で彼の博識に驚きと尊敬を覚え、やはり「知る喜び」で万事にあたるとこうも違うのかと思い知らされました。学校の勉強もこういう知る喜びでやれば良かったのになと後悔しました。

 そういう事情があったので、こどもたちからの逆襲の質問に対しては答えに窮してしまいました。「学校の勉強は好きじゃなかったよ、でもやらなきゃ仕方がないでしょう。知らないより知っている方が楽しいよ、だからつべこべ言わずに勉強しなさい!」云々と屁理屈でごまかしたのが今も記憶にあります。

 自主的な意欲で勉強しないと役には立たないとか、人間形成上大切な部活動はやりとげてほしいとか、塾に縛られる生活をこどもにはさせたくないという主人の信念に従いまして、私は命令形の「しなさい!」をやめて、「勉強した?」「計画通りに進んでる?」という声かけにしました。親としては大変我慢のいる作業ですが、じっと我慢の子でした。幸いにどの子も父親に似て、部活動も勉学もそれなりに全力投球出来たようで、主人と子どもに感謝です。

 数年前にある方のヨーロッパ視察の帰朝報告を聴く機会がありましたが、パリの「夜の学校」の話には大変感激しました。学校の校舎を夜開放して大人のための各種講座を開催しており、多くの大人が受講料を払ってまで「知る喜び」を楽しんでいるのだそうです。社会人になってから学ぶ喜び、知る喜びを再認識した人たちですので、出席率は昼間のこどもの学校よりいいそうですよ。

 孟母三遷という中国のことわざがありますように、こどもは何でも「大人の真似」から始まります。ですから、こどもに勉強してほしいのなら、親が勉強している姿を見せることが大切なのではないかと思います。我が子が小さい頃、私は仕事に家事に育児にと忙しく、あんまりいいお手本ではなかったと後悔しております。でも、主人は本に埋もれた生活でしたので(少年ジャンプもね!)、きっと子どもにいい影響を与えたと思います。

 昔から「子どもは親の後ろ姿を見て育つ」と言います。勉強している後ろ姿、仕事をしている後ろ姿、一所懸命に生きている姿を見せることで、こどもも知らず知らずに同じ事をするのではないでしょうか。

 今はやりの「ブックスタート」、こどもに本を読み聞かせるのも大切ですが、親が本に夢中になっている姿を見せるのも大切ですね。

 読書の秋、ならざき小児科のぞうさん文庫がお役に立てたら嬉しいですね!

(2004年11月1日)

reading

第26回:子育ては難行苦行? 眠り編

 先日、孫が生まれました!いよいよ私たちは「じぃじとばぁば」になりました。自分たちの結婚、ハネムーンベビーの誕生、4人の子育て・・・今も鮮やかに記憶にあるのに、もう「じぃじとばぁば」だなんて、月日が経つのは速いなと思わずにはいられません・・・

 新米パパ・ママ「K&K」が赤ちゃんの夜泣きに苦労してはいないかと気にかけながら、自分達の子育て時代のことを思い返してみました。

 確かに初めての赤ちゃんの時には大変だったのをよく覚えています。きっと親にとってはすべてが未知との遭遇ですので、不安や緊張がそのまま子どもにも影響したんでしょうね。母乳があまり出ませんでしたのでおっぱいで泣きやませることもできないし、またパパは一旦眠ると火事が起こっても気がつかないタチでしたので、赤ちゃんの夜泣きと一緒にママも泣くといったこともありました。イライラして、赤ちゃんのお尻を力いっぱい叩いたこともありました。そうこうしているうちに、胸の上に寝かせたり背中におぶったりするととても落ち着くのを発見した時には感激しました!コツが分かってしまえば、後の3人の時には、母乳も良く出たし、大した苦労はありませんでした。

 「よく寝る子は育つ」という言葉がありますが、「眠り」はこどもに限らず大人にとっても大切なものです。近年、研究がすすみ、眠りは単なる疲れをとる休養だけではなく、生きていく上に欠くことができない大切な働きをしていることがわかってきました。

 眠りと体温、眠りと生体時計、眠りとメラトニン、眠りと成長ホルモン、眠りとステロイドホルモン、眠りと血糖値などのように、眠りは体のさまざまな生理的な活動に深く関わっているのです。当然知的活動や情緒面にも影響があります。

 特に私たちの生体時計のリズムを地球時間のリズムに合わせるのに重要な要素の中でも、最も大切なのは「目覚めと朝の光」だそうです。逆に夜間に光を浴びると生体時計に狂いが生じ、地球時間とのズレがますます大きくなって慢性的な時差ボケ状態になるのだそうです。

 最近我が家の近くにも24時間営業のスーパーができ、仕事で遅くなったときなどには重宝していますが、深夜にもかかわらず小さい子どもの姿を時々見かけます。

心痛む思いがしますね。子どもの就寝時間に関する全国規模の調査によれば、夜ふかしの子ども達が急速に増えているそうです。また、学童期以後の子ども達の約四割は睡眠不足と感じているのだそうです。諸外国のデーターと比べてみると、日本の子ども達の睡眠時間は明らかに少ないのです。

 夜ふかし、寝不足の原因として、勉強(塾通いなど)、テレビ・ビデオ鑑賞、インターネット、携帯、コンビニなどがあげられます。時代が時代だからとおしゃるお偉い方もいるようですが、人間の体、特に子どもの体の生理活動は時代に合わせて変わるわけではないのです。今日のメディア社会のまっただ中で、大人達は目先の商業主義にとらわれてしまい、子ども達はその被害者になっています。眠りの環境が奪われているのです。特に乳幼児期のこどもたちは強制的に親の生活リズムにつき合わされていると言えます。

 早起きは三文の得と昔から言われていますが、体調を整えるのは「朝の光」なのです。朝の光を浴びることによって、生体時計が整えられ、昼間の活動性が高まり、脳由来の神経栄養因子セロトニンが活性化され、その結果として感情のコントロールや知的活動にいい影響が期待されるのです。また、昼間に受けた光の量が多ければ多いほど睡眠に効果のあるメラトニンが増え、良い睡眠が得られるだけでなく、メラトニンの抗酸化作用による全身への好影響も期待できるのだそうです。

 早起きから始めましょう!

(2004年9月7日)

第25回:「ハネムーン」と「フルムーン」の間に

 先日クマさんと1泊2日のフルムーンに行って参りました。普段の会話はナイトキャップの短い時間にしか取れないのですが、往復計10 時間も新幹線に缶詰にされると、否応なしにゆっくりおしゃべりができ、本を読んだり、ワインを飲んだりと、飛行機より味わいがあって、スローライフもなかなかいいなぁと思いました。

 思い返してみるとハネムーンも列車移動でした。貧乏研修医時代でしたので、当時すでにはやり始めた海外旅行ではなく、伊豆半島への気ままな旅でした。時はちょうど伊豆地震の直後、昭和天皇陛下の行幸と日程が重なって、いきなり交通規制に出くわされたり、大変でしたが懐かしい。

 あれからすでに四半世紀が経ち、赤の他人同士が夫婦になって、何もないところから1つの家庭を築き上げるのですから、平穏無事・順風満帆であるはずがない。夫婦善哉曰く、道のりはキツネとタヌキの騙し合い云々、まさしく幾たびの山なり谷なりを乗り越え、フルムーンに辿り着いたのでございます。事務長のコアラさんによく「お二人は仲がいいね」と言われます。百の夫婦があれば百パターンの夫婦の形がある中、仲がいい方になれて嬉しく思っております。

 職場の若い方の結婚に際し、贈る言葉としていつも申し上げるのは「結婚後は片目をつむって、忍耐と努力を忘れずに!」です。昨年結婚した息子夫婦にも贈りましたが、恋は盲目とも・・・片目ではなく、両目ともず~とつむったままの方がいいかも・・・とも思いました!しかし、自己嫌悪しながら、ついついあら探しを繰り返ししてしまうという悲しい現実もあります。結局夫婦というのは、壊れては修復するという作業をくり返しながら、同じ道を共に走っている感じが致します。

 夫婦の形を育て上げるのは私的なことですが、4人のこどもに恵まれたことは私達夫婦にとって大きな社会的貢献だったと思っております。少子社会にあって4人兄弟というのは貴重な存在と大人の世界では評価されますが、しかし、いつの時代においてもこどもの世界には残酷な一面があります。私にとっては目に入れても痛くない末っ子の三男が、小学校に入って間もないころのことですが、「僕っていらない子?」と泣きべそをかきながら学校から帰ってきました。何事かと聞きますと、兄弟が多いことから「あんたは本当はいらない子なのよ!」と同級生にはやされたらしい。深く傷ついた彼のこころを癒すのに、私は幼子にもわかるような言葉を選びながら、父・母のこころにとどまらず、兄弟やアーちゃん(近所の世話好きなお姉ちゃんたち)がどんなにあなたが生まれるのを楽しみにしていたのかを、そしてあなたが生まれてきてみんながどんなに幸せに思ったかを、彼に伝えました。ようやく彼が「僕はいらない子じゃない!」と自分に言い聞かせるように微笑みました。

 程度の差はありますが、4人ともそれぞれに登校を嫌がったり、家族との交流を拒んだりなど、悩みや問題をかかえた時期がありました。ポリスのお世話になったこともありました。問題に直面させられた私たち夫婦は、そのつど親としてどうあるべきか、考えたり悩んだり、迷路の出口を探すかのような話し合いをしたりしてきました。場合によってはこどもに内緒で学校と相談したり、また、こどもの方が正しいと判断した場合にはこどもと一緒に学校と渡り合ったりもしました。時にはこどものこころが見えずに苦しんだこともありました。

 「同じように育てたのにどうしてこうも違うのか」と嘆いたこともありました。しかし、後になってわかったのは「同じように育ててはいけない」ってこと!愛情が同じでも伝え方に違いが必要だし、それぞれの個性に合わせた育て方でないといけない。こどもがこころを閉ざすまで気づかずに「同じように育てた」のは親として怠慢でした。未熟だったと後悔もしました。こどもの数だけ親子の形が必要でございます。親として成長しなければ・・・「育児は育自・育慈」と、クマさんがならざき小児科の法人名を「育慈会」と決めたのには、このような背景もあったのです。

 「ハネムーン」と「フルムーン」の間に、一人ずつ家族が増え、そして一人ずつ羽ばたいていきます。そしてまた、いずれは夫婦二人に戻ります。もちろん楽しいことも数え切れないぐらいいっぱいありました。いま、神様からの贈り物として、とても楽しみにしているのは「孫」の誕生です。もうじき私たちはじいじとばあばになります!感謝!

(2004年6月14日)

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